税金の納付は国民の義務ですが、会社として節税を心がけるのは当然の企業努力です。
しかし、そのときに税額の減少額だけに目を向けてはいけません。
企業の終局的目標は将来キャッシュフローの最大化です。
税額を圧縮するのは、税金がキャッシュフローの減少要因の一つとして作用するからに他なりません。
本業で利益が大きすぎるから、利益を削減するために銀行から借入金を借りて
機械などの減価償却資産を購入するということが行われることがあります。
たとえば、100の借入金を銀行から借入(借入期間10年、金利5%、期日一括償還)、
100の機械(耐用年数10年、定額法による減価償却)を購入したとします。
これにより、利益(税務上の所得)は金利の5と減価償却費10を合わせて15減少します。
実効税率を40%とすると1年間の節税額は6になります。
これが10年間続くとすれば、節税額はトータルで60になります。
確かに税金に限定したときのキャッシュアウトは60減少します。
しかし、借りた借入金は10年後に返しますから、時間価値を無視すれば、
キャッシュフロー的にはプラス・マイナス0ですし、減価償却費もキャッシュフローには関係ありません。
プラスのキャッシュフローは税額減少分の60、マイナスのキャッシュフローは10年間分の金利50と
機械購入代金100を合わせた150ですから、ネットでマイナス90のキャッシュアウトになります。
結局この設備投資で10年間で最低90以上のキャッシュフローのプラスを生み出すかどうかを検証する必要があります。
節税には大きく分けて、買う節税と売る節税があります。
減価償却資産の購入は典型的な買う節税です。
買う節税では減価償却費と金利で税金は減少しますが、
資産購入に伴うキャッシュアウトがあることを見逃してはいけません。
一方、売る節税の損得計算はとても明確です。
たとえば、含み損を抱えた遊休資産の売却を考えてみましょう。
簿価100の土地の時価が60だったとします。
したがって、含み損が40あります。
この土地を売却して節税するときのキャッシュフローは次のようになります。
時価60で売却するのですから、含み損が実現損に変わり、売却損失40が発生します。
実効税率を40%とすると、税額は16減少します。
キャッシュフローのプラスはこれだけではありません。
資産そのものの売却額60もプラスのキャッシュフローを生み出しますから、
合計のキャッシュフロープラスは、税額の16と売却代金60を合計した76になります。
このように、含み損を抱えた資産の売却に伴うキャッシュフロー計算は明確です。
節税を考えるときには直接に減少する税金だけを考えるのではなく、
その節税行為全体のキャッシュフロー計算が重要であること、
及び、節税には買う節税と売る節税があり、買う節税のキャッシュフロー計算は不確定なのに対し、
売る節税のキャッシュフロー計算は明確だということがいえそうです。
節税の明確な第一歩は、将来のキャッシュフロー収支の不透明な設備投資ではなく、
含み損のある資産の整理だということを再認識したいものです。
(記事提供者:(株)税務研究会 税研情報センター)
◆税理士のみに「事前通知」が可能に!
平成26年度税制改正において、国税通則法及び税理士法の一部が改正されました。
これによれば、平成23年12月改正(平成24年10月1日から実施)より行われていた
税務調査の『事前通知』(調査を行う旨など法定の11項目を電話(口頭)で通知する制度)について、
税務署が『納税者』と『税理士(税務代理人)』の双方に対して行っていたものを、
今後は納税者の希望により、『税理士』のみの形とすることが選択できるようになったとのことです。
この場合、『新制度』を希望する納税者は、申告書の提出時に添付する新形式の
『税務代理権限証書』の『調査の通知に関する同意』
(調査が行われる場合には、代理人に通知することに同意)欄のチェック欄『□』に
チェックマーク『レ』を入れて頂くことになります(平成26年7月1日以後の提出分より)。
◆一般納税者の気持ちを慮ると…
平成23年改正の税務調査制度の法定化はいろいろと明確になった点
(無予告調査の要件化など)も多かったのですが、この『事前通知』(日程調整の連絡・事前通知項目)が
あまり日常では税務署との接触のない納税者の方にいくと、当初はかなりビックリされておりました。
そのようなこともあって、税理士の側でも、折に触れクライアント様に『税務調査があるときは…』
と周知を行ってきましたが、以前の運用のとおり『税理士のみで構わないのでは…』という意見もかなり出ておりました。
◆H26.3決算でも『前倒し』適用できます!
平成26年4月に国税庁HPには、この『新制度』に関するFAQが早速掲載されております。
これによれば、
①H26.3決算法人がH26.5に提出する申告書にも『事前通知に関する同意』を記載した
税務代理権限証書を添付することが可能なこと、
②これまで提出した申告書について『事前通知に関する同意』をしたいときは、
過年度分について提出する必要はなく、次回の申告の際に、
(新)税務代理権限証書の『過年分に対する税務代理』欄のチェック欄『□』に
チェックマーク『レ』を入れてればよいこと、
③既に提出してしまった相続税申告書に『新制度』を用いたいときは、
『同意』を記載した税務代理権限証書を再提出することなどの取扱いが追加されています。
◆個人株主が破産した場合の自己株式取得
平成26年3月14日付の東京国税局の文書回答事例に面白いものがありました。
平たく言えば『個人株主が破産した場合に、会社がその自社株式を破産財団から
買取った場合には、源泉徴収はしなくても構いませんよね?』という照会です。
この事前照会によると、照会者である会社(当社)の取締役が裁判所から破産手続開始の決定を受けてしまい、
当社の株式がその破産財団に組み込まれてしまったとようです。
当社は非上場であるため、破産財団側としても市場で売却するなどの処分もできず、
当社が時価による自己株式の買取りに応じた―ということでした。
◆通常の非上場の自己株式取得なら源泉徴収
通常、非上場会社が自己株式を取得した場合では、その自己株式の取得により
交付を受ける金銭等の額が当社の資本金等の額(基因となった株式に
対応する部分)を超えるときには、その超える部分が『みなし配当』とされ、
所得税法では配当所得、『みなし配当』以外の部分が株式等に係る譲渡所得となります。
当社の立場から言えば、この『みなし配当』について源泉徴収義務が生じるということになります。
◆強制換価手続きによる非課税規定の射程
所得税法には『資力を喪失して債務を弁済する能力が著しく困難な場合における
強制換価手続きによる資産の譲渡による所得』は非課税とする規定があります。
そこで、照会者は、当社の事案がこれに該当しますよね?と事前照会をした訳です。
一見、この自己株式の取引は、取締役が財産の管理処分権を失ったことにより
株式を組み入れた『破産財団』と『当社』の取引なので、
資力を喪失した取締役(個人)の取引には見えません。
従って、取締役の資力喪失を要件とした非課税の適用は難しいように見えますが、
法律上はこの時点で取締役は財産の管理処分権を喪失していても、
所有権までは喪失していない状態―つまり、取締役個人がまだ取引の当事者という位置付けなのです。
また、この非課税規定の『資産の譲渡による所得』を聞くと、
『譲渡所得』が連想されますが、強制換価による譲渡を原因とする所得を意味するため、
『配当所得』でも非課税であると判断されました。
企業経営では、一般に複数の従業員が、生産・営業・開発など共通の目的・目標を
達成しようとして力を合わせて働かなければならないことが多く、
リーダーシップの巧拙がメンバーの意識・行動を変え、成果を左右することは良く知られています。
◆リーダーシップのあり方
チーム目標を必達するためのリーダーシップのあり方は、
“リーダーの舵取りの下で、メンバーが力を合わせて、自発的に状況判断を行ない、
考え、行動する”方向へ誘導すること、さらに掘り下げれば、
望ましいメンバーの意識。行動を生み出す源泉を確保すること、と言えます。
ある目標に向かってチーム活動が動き出すと、思い通りに、何の障害もなく
進行するなどと言うことは全く考えられず、次々と出てくる障害、問題を解決し続けて行かなければなりません。
それらに対して果敢に対処し続ける力、すなわちチーム力の源泉を、
テーマ・目標設定の段階で確保しておくことがリーダーシップのあり方の基本と言えます。
◆目標必達への源泉を掘り当てる
チームメンバー個々は、専門知識・技術、得意技など異質な人間の集まりです。
そのメンバー個々がテーマ・目標に対して共通の理解と、
どうしても達成したい価値を共有したとき、目標必達への源泉が確保されたと言えます。
このような源泉は、人間の意思。
やる気にあるので、自分達が取りかかろうとする具体的な問題・課題解決テーマについて、
・なぜこの課題解決が必要なのか
・なぜこの目標(達成レベル・時期)が必要なのか
・目標が達成された時の状況(目標が達成されたとき、具体的に何がどのように変化しているのか
・達成プロセスでの自分達個々の役割、協力の仕方
以上のような事柄をチームメンバー全員参加、全員発言で、
突っ込んで話し合うことを通じて、チームメンバーの役割意識、力の合わせ方、
自主的な動き方など、チーム目標必達へのパワーが生まれます。
◆経営者の留意点
経営者は、リーダー達に向かって、チーム力の源泉確保の重要性、スタート段階の話し合いの実践を指導するべきです。
◆次世代育成支援対策の一つ
厚生労働省は育児休業の取得を促すため、雇用保険制度の所得を補う
育児休業給付の拡大を決めました。
今までは原則、子が1歳になるまで給与の50%補償をしていましたが、
平成26年度から育休の当初半年間に限り、3分の2(67%)に引き上げます。
昨年の秋に給付の増額は方針が決まったのですが、次のように発表されています。
◆労働政策審議会報告の概要
「育児休業給付は育児休業を取得しやすくし職業生活を円滑の継続促進するために
雇用保険の失業給付の1つとして設けられている。(中略)
育児休業給付金受給者が増加していることから育児休業の取得促進に
寄与はしていると考えられるが、一方で収入が減るという経済的理由から
育児休業を取得しなかった男女とも一定程度は存在する。
特に男性の育児休業取得率は平成24年度において、
2%弱と伸び悩んでいる状況にあるが男性の育児休業を促進することは
男性のワークライフバランスの実現だけでなく、女性の育児負担を軽減し、
女性が職場で継続して働き就業率向上にも資する。
夫の育児・家事時間が長いほど第2子以降の出生割合が高くなる傾向にあることから
育児休業促進による男性の育児参加の拡大は少子化対策にも資するものになる」
としています。
以上のような背景から今回の給付率の引き上げとなったのです。
◆男女共に育児休業を取得促進できるか
給付率は引き上げられますが、その率は出産手当金の水準を踏まえ
育児休業開始時から6か月間について67%の給付率とすることになっています。
この率は育児休業給付が非課税であること、休業期間中は社会保険料免除措置があり
休業前の税・社会保険料控除後の賃金と比較して実質的な給付はさらに高くなるという計算です。
出産、育児に関する支援措置は労働基準法、育児・介護休業法、雇用保険法、
厚生年金保険法、健康保険法等多岐に絡んでくるので複雑で全体を把握するのは面倒です。
受給率引き上げが必ずしも取得率向上となるかはわかりませんが、
受給者のメリットは増えます。
しかし企業側では取得者が増えると事務面の煩雑や人のやりくりも大変になるという面もあり、
現実的な問題も増えそうです。
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